働き始めて数か月、あるいは1年を迎える前に、辞めたいという気持ちが急に強くなることがあります。学生のころに思い描いていた働き方と現場の忙しさに差があったり、周囲のように動けない自分に落ち込んだり、家に帰っても翌日の勤務のことばかり考えてしまったりと、きっかけはひとつではありません。
この時期に辞めたいと感じること自体は、多くの人が一度は通る感覚でもあるようです。だからといって我慢を重ねることが正解というわけでもなく、心身の状態によっては早めに環境を変えたほうがよい場合もあります。大切なのは、いまの気持ちをそのままにせず、判断できる材料に置き換えていくことです。
この記事では編集部の視点で、辞めたいと感じやすい時期とその背景、理由を分けて整理する方法、続ける場合と環境を変える場合それぞれの考え方、そして動くと決めたときの進め方をまとめます。答えを押しつけるものではなく、自分で選ぶための材料としてご覧ください。
辞めたい気持ちが強くなりやすい時期がある
入職してからの1年は、求められることが数か月ごとに変わっていく期間です。最初は職場の物品の場所や記録の書き方を覚えることに追われ、少し慣れてきたころに受け持ちの人数が増え、その後に夜勤が始まる、という流れをたどる職場が多い傾向にあります。慣れたと思った矢先に負荷が一段上がるため、気持ちの波が生まれやすい時期といえます。
とくに生活リズムが変わる時期は、疲れが抜けにくくなります。夜勤が加わると睡眠の取り方も食事の時間も変わり、休日の使い方も以前と同じにはいきません。体調の変化が気持ちの落ち込みとして表れることもあるため、いまの状態が仕事の内容によるものなのか、生活の変化によるものなのかを分けて見ておくと判断しやすくなります。
短くてもよいので、いつ何がつらかったのかを書き残しておくことをおすすめします。一時的な波なのか、同じ場面で繰り返し起きているのかが見えてくるためです。記憶は印象に引きずられやすく、後から振り返ると全部つらかったという感覚だけが残ってしまいがちです。日付と出来事を数行残しておくだけでも、後の判断材料になります。
辞めたい理由を種類ごとに分けて書き出す
辞めたいという一言のなかには、性質の違う悩みがいくつも混ざっていることがあります。全部をひとまとめにしていると、何を変えれば楽になるのかが見えません。まずは次のように種類ごとに分けて、いまの自分がどこに当てはまるのかを確かめてみると、輪郭がはっきりしてきます。
| 理由の種類 | よくある状態 | 確かめたい点 |
|---|---|---|
| 業務量と時間 | 時間内に終わらず、記録のために残る日が続く | 人員配置や手順の問題か、慣れで改善する範囲か |
| 知識や技術への不安 | 急変や処置の場面で自信が持てない | 相談できる相手や学ぶ機会が用意されているか |
| 人間関係 | 質問しづらい、指導の言い方が負担になっている | 特定の相手との関係か、職場全体の空気か |
| 勤務条件 | 希望休や夜勤の回数が思うようにならない | 制度としてないのか、運用上そうなっているのか |
| 体調と生活 | 眠れない、食欲が戻らない状態が続いている | 休養や受診を先に置くべき段階ではないか |
| やりたい看護とのずれ | 関わりたい分野と現在の部署が合っていない | 部署異動で近づける範囲かどうか |
分けてみると、職場全体がつらいと思っていたのに、実際には特定の場面や特定の関係に集中していたと気づくことがあります。その場合は、部署の変更や勤務帯の相談で状況が変わる可能性があります。反対に、複数の種類にまたがって重なっているときは、職場そのものを見直す判断材料になっていきます。
人間関係が中心にあると感じる場合は、悩みの中身をさらに細かく分けておくと次の判断がしやすくなります。整理の手順については人間関係が理由の転職|次の職場で繰り返さない整理の仕方でも触れていますので、あわせて確認してみてください。
いまの職場を続ける場合に考えたいこと
一定期間同じ職場で働き続けることには、基礎的な技術や判断の型が身につきやすいという面があります。とくに急性期の病棟では、限られた期間でさまざまな場面を経験できる傾向があり、その経験が後の選択肢を広げる土台になることもあります。求人によっては経験年数の目安が示されている場合もあり、年数が味方になる場面は確かに存在します。
ただし、年数だけがすべてを決めるわけではありません。体調を崩してまで続けることが将来の役に立つとは限らず、回復に時間がかかれば結果として選べる範囲が狭くなってしまうこともあります。続けるかどうかは、得られるものと今の負担を並べて比べる形で考えるのが現実的です。
続けると決めたときに試したいこと
続ける方向で考える場合は、いまの負担を少しでも軽くする工夫を並行して進めておくと、気持ちの持ちようが変わってきます。すべてを自分の努力で解決しようとすると行き詰まりやすいため、環境や仕組みに働きかける方法も含めて検討してみてください。
- 一日の動きを書き出し、時間がかかっている工程を特定する
- 分からない手順は事前に確認しておき、その場で迷う回数を減らす
- 相談できる相手を、職場の中と外にそれぞれ確保しておく
- 休みの日に仕事から離れる時間を意識してつくる
- 体調の変化が続くときは我慢せず、早めに専門家に相談する
教育担当の看護師や上司に、いま何につまずいているのかを具体的に伝えることも有効です。できないという抽象的な表現よりも、この手順のこの場面で判断に迷うという形にしたほうが、相手も具体的な支援を返しやすくなります。伝えること自体が負担になる場合は、看護部の担当者や相談窓口を使う方法もあります。
早めに環境を変えることを考えたい場合
眠れない日が続く、休みの日も気持ちが晴れない、食欲が戻らないといった状態が長引いているときは、続けるか辞めるかを考える前に、休むことや医療機関に相談することを先に置きたい状況といえます。判断力そのものが落ちている状態で大きな決断をすると、後から見て納得しにくい選択になってしまうことがあります。
また、安全に関わる不安が続く場合も、環境を見直す材料になります。相談できる相手がいない、確認したくても人手が足りない、といった状態が常態化しているのであれば、それは個人の努力だけで埋めにくい部分です。自分の力不足だと結論づける前に、体制の側に理由がないかを確かめてみてください。
迷いが深いときほど、一人で抱え込まないことが大切です。看護部の担当者、学校時代の同期、家族など、立場の違う相手に話してみると、自分では見えていなかった選択肢が出てくることがあります。判断の材料が増えるほど、選んだ後の納得感も生まれやすくなります。
動くと決めたときの進め方と時期の目安
環境を変えると決めた場合でも、その日のうちに退職を申し出る必要はありません。情報を集めて条件を整理し、応募して選考を受け、退職の相談と引き継ぎを進める、という一連の流れにはある程度の期間がかかります。全体像を先につかんでおくと、焦らずに進めやすくなります。手順の目安は看護師の転職の流れ|情報収集から入職までのステップと期間の目安で整理しています。
求人の出方には季節による傾向があるといわれます。年度の切り替わりに向けて動きが出やすい時期や、比較的落ち着いている時期があるため、急ぎでなければその流れを踏まえて動くという考え方もあります。時期の考え方については看護師が転職するタイミング|年度と求人数の関係から考えるもあわせてご覧ください。
次の職場を探すときは、いまの職場で何がつらかったのかをそのまま裏返して条件にすると分かりやすくなります。教育体制を重視するのか、勤務のリズムを重視するのか、通勤時間を短くしたいのか。すべてを満たす職場は多くないため、優先順位をつけたうえで見比べていく形になります。
面接では、辞めたい理由をそのまま伝えるのではなく、次にどう働きたいかという表現に置き換えるほうが伝わりやすい傾向があります。事実を隠す必要はありませんが、不満の説明で終わらせず、今後やりたいことにつなげる形にしておくと、話がかみ合いやすくなります。
まとめ
働き始めて間もない時期の辞めたいという気持ちは、性質の違う悩みが重なって生まれていることが多いようです。気持ちのまま急いで結論を出すのではなく、また我慢だけで押し込めるのでもなく、判断できる材料に置き換えていくことが、後から振り返ったときに納得しやすい選び方につながります。
- 入職後の1年は求められることが数か月ごとに変わるため、気持ちの波が起きやすい
- 辞めたい理由は業務量、技術の不安、人間関係、勤務条件、体調などに分けて書き出す
- 続ける場合は、負担を軽くする工夫と相談先の確保を同時に進めておく
- 心身の不調が続くときは、判断より先に休養や専門家への相談を置く
- 動くと決めたら、全体の流れと時期の傾向を踏まえて余裕をもって進める
いまの状態がつらいかどうかを決められるのは、本人だけです。周囲の意見はあくまで材料のひとつであり、最終的にどう働きたいかという軸が定まっていれば、続けるという選択も環境を変えるという選択も、それぞれに意味のある一歩になります。焦らず、書き出すところから始めてみてください。

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